CASE STUDY
進出事例
-
INTERVIEW 04
株式会社サンクレエ
代表取締役
森 正人
30年以上にわたって製品開発からカスタマイズやサポートを一貫して行っている「サンクレエ」。様々な発想で新しいアイディアを創造し、海外展開をはじめ新たな取組みにも積極的にチャレンジしています。その取組みについて、代表取締役の森正人さんにお話を伺いました。
海外人材の活用
株式会社サンクレエは創業以来、中小企業向けの販売管理や在庫管理業務の省力化、効率化等を中心に事業展開しており、海外進出については、2007年にオフショア開発の拠点として瀋陽ラボ(中国遼寧省)を設置して、現在に至っています。海外とのオンラインミーティングは日本企業の日常的な光景となっておりますが、当社では約20年前から現地中国人スタッフと毎週定期的にオンラインミーティングを行っていました。
また、当社ではバングラデシュ人2名を正社員として採用して、エンジニアとしてシステム開発を行っています。北海道大学との連携によりAI技術の活用に関する共同研究を行い、AIの技術やモデルを組み合わせて新しい自社サービスを作る検討をしていましたが、最新の技術やモデルを参照するためには英語が必須の上、必要なAIの技術スキルを持つエンジニアを国内で採用できなかったため、外国人エンジニアの採用を検討していたところ、他県での取組みを参考にバングラデシュ人の採用に至りました。
以上のことから、社歴の大半は、海外と関わり合いながら事業展開を図っていましたので、海外とのビジネスは常日頃身近に感じる環境でもありました。
少子高齢化問題への取組み
昨今、日本では少子高齢化が話題に上がることが多いですが、海外に目を向けると、ASEAN諸国の高齢化も急速に進行しています。2040年頃にASEAN諸国の高齢者※注3は1億人を超えるとみられており、介護従事者の数が追い付いていないのが現状です。
当社では、少子高齢化社会におけるAI(人工知能)・LoT(モノのインターネット)サービスの研究開発及び社会実装を目指すべく「人の代替手段としてのAIの利活用」の一環として、介護施設の入所者を見守るシステムを2019年に開発しました。具体的には、ベッドに横たわる人の動きをカメラで撮影、プライバシーに配慮する為に動画を残さず人工知能(AI)で解析し、異常があれば家族や施設職員らに通知するといったものです。当社のサービスは、効率化や省力化を主軸としていましたが、少子高齢化社会の中で効率化や省力化では追いつかないのが現状であることと、介護の現場は人手不足が顕著であるため、新たにAIを活用しながら無人化対応ができるシステム開発に注力しています。
今後、日本国内のみならずアジア各国でも直面している課題に対して、当社のサービスは有効であると考えているため、事業展開先は日本国内だけではなく、アジアも視野に入れています。
少子高齢化は世界でも喫緊の課題
少子高齢化は世界でも喫緊の課題であり、当社では中国、シンガポール、マレーシア、ベトナム、フィンランドの介護施設の訪問やヒアリング調査のほか、当社のサービスの提案、フィールドテストを実施したことがあります。日本では高齢化が進行している一方で、介護事業におけるノウハウは他国より進んでいます。特にアジアにおいて、少子高齢化は日本に追随するような形で表面化しており、日本の介護技術は世界でも関心が高くなっています。また、フィールドテストを実施した経験より、AIを活用した日本の介護技術は世界で通用する手ごたえを感じています。
2022年、当社はJETROの「日ASEANにおけるアジアDX促進事業」に採択され、「AIと非接触センシングによるプライバシー配慮型高精度見守りの開発と導入」をテーマに、現地企業と連携して、シンガポール・マレーシア国内で実証・検証事業を実施しました。これらの結果を踏まえて、今後は海外でのサービスインに向けた事業展開を図っていきます。
海外と日本のビジネスの進め方の違い
海外企業との商談においては、ビジネスの進め方に大きな違いがあり、ギャップを感じることが多々あります。海外企業との商談では先方が想定しているビジネスモデルや予算、人員などが壮大な規模であり、当社のような中小企業のレベルでは対応できないこともあることに加え、商習慣や文化の違いにも大きなギャップを感じています。しかし、その時点ですぐ諦めるのではなく、対面式でのミーティングを重ねながら互いに納得できる着地点を粘り強く模索するなど、オンラインミーティングのみならず直接対話の場を数多く設けることが必要だと感じています。
海外進出による気づき
以上の取組みや海外での事業展開の模索は、自社事業を客観視するとともに、国内事業を改めて見直すきっかけにもなりました。見直したことの一つ目は、日本国内のマーケットに対する考え方です。少子高齢化と人口減少は避けられないため、これからの国内マーケットの拡大は非常に難しいです。その一方で、人口が多いアジア圏においてはマーケット拡大の余地はあると感じています。特に介護分野については、アジア圏でも拡大していくことは間違いないので、当社では国内だけではなく海外も視野に入れたビジネス展開をより一層進めていきます。
二つ目は、国内事業の整理や棚卸しです。国内で通用していたビジネス手法が海外では通用しない場合が多々ありますが、それらを整理して、ハードルを乗り越えていくプロセスが国内でも通用するケースがあります。他方、国内の成功体験に固執することは、企業の成長を妨げる側面があります。海外での様々な経験を通じて、自社事業を改めて見直すことより、変化に柔軟に対応できるきっかけとなります。
さいごに
現在取組んでいる介護関連事業は国内外で喫緊の課題であり、その他の社会的課題に対しても我々のIT業界は充分貢献できると思います。AI、IoTなどの最先端技術への取組みを通じて、国内外問わず常にチャレンジを続けていきます。
1989年(平成元年)創業、販売管理パッケージソフトをベースとした
ソリューションを中心に、業務効率を支援する最適なソフトウェア開発や
ソリューションサービスの提供のほか、少子高齢化社会における企業の
DX化を支援している。また、近年では、介護関連事業等も手掛けており、
日本国内だけでなく、アジアを中心に展開をしている。
- 社名
- 株式会社サンクレエ
- 所在地
- 札幌市中央区北12条西23丁目2-5SDC 北12条ビル5階
- 事業内容
- ソフトウェア開発
- 従業員数
- 30名