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CASE STUDY

進出事例

1952年(昭和27年)創業の「とんかつ玉藤」は、昔ながらの職人の技術や精神を大切にしており、「うまいとんかつ一筋」を目指して日本国内で展開し、2017年2月に海外1号店「玉藤カパフル店」を米国ハワイ州ホノルル市に出店しました。その海外進出について、「とんかつ玉藤」の運営をしている株式会社どうきゆうの代表取締役中西泰司さんに伺いました。

ハワイ進出のきっかけ

株式会社どうきゆうは、創業以来、給食事業で成長した企業でしたが、約30年前から外食事業への展開も進めていました。その外食事業の一環として、1996年(平成8年)に株式会社玉藤をグループ傘下に吸収し、現在は「とんかつ玉藤」の運営も担っています。
2015年頃、「とんかつ玉藤」の新店舗の出店を道内・本州エリアで検討していましたが、当時は本州外食企業の新規出店が相次いでおり、出店場所の確保が難しい状況でした。そこで、「日本国内ではなく海外へ出店しよう」と、社員との雑談の中からハワイに決まりました。ある種のひらめきのような感じで決めましたが、「なぜ、ハワイのなのか?」と問われると、ハワイは「楽園の国」のようなイメージがあるのと、日本からの観光客も多いので視覚的に出店がイメージしやすかったというのが理由でしょうか。

海外出店の目標設定

とはいえ、ハワイへの出店は、それなりの投資が必要であり、ハワイというマーケットは3年以内で約90%の飲食店が撤退するといわれている激戦地であるため、大義名分や目標、戦略については社内で検討を図りました。特に、海外進出は多額の資金と時間を要するため、そのリターンは何かを明確にしなければなりません。
そこで当社では、「世界に通じる“企業品質(世界基準)”を作る」、「成熟したマーケットへの挑戦」、「社内の活性化」の3つの目標を設定し、「米国ビジネスを学び国内事業へのリターン(新たな価値基準とノウハウの構築)」を目指すことにしました。
激戦地での挑戦により金銭的な成果には時間を要すると推測される一方で、アメリカの会計システムや労務管理の手法など、ビジネスのグローバルスタンダードについて学んだことを国内事業に活用することも出店の成果としました。

激戦地のマーケットでの挑戦

出店にあたっては、激戦地でもあるマーケットに挑戦するため、他店との差別化が必要となります。せっかく日本から出店しますので、品質やホスピタリティは日本式としながらも、現地の方と協力して店舗運営を行い、ハワイで勝ち抜くために、「独自性の時代に適合する『高品質化』」、「超個別対応による『顧客心満足』」、「自主自立型の人財育成による『チーム運営力』」、以上3つの差別化を設定しました。
差別化に向けた具体的な取組みとして、『高品質化』については、「とんかつ玉藤」の品質をハワイで展開すること、『顧客心満足』は日本の「おもてなし精神」と現地の接客スタイルとの融合を図っていくこと、『チーム運営力』は互いの価値観を尊重しながらコミュニケーションを密にしてチーム力を上げていくことを実施しました。

ハワイへの出店準備

ハワイでの出店を決めましたが、海外出店は法人設立と同様で手間暇がかかります。フランチャイズなどの運営手法もありますが、当社は自分たちの手で運営をしたいため、2015年に現地法人を設立して、出店の準備を始めました。しかし、海外のノウハウがまったく無い状態でしたので、私は出店までの2年間、ほぼ毎月ハワイに渡航して、徹底した現地調査と人脈形成に時間をかけました。
具体的には、現地専門家を通じてアメリカの会計システムや労務管理の手法を学んだことに加え、就労ビザの取得の準備も進めました。また、ハワイ州政府関係者や現地の日本人商工会議所との人脈形成やコミュニケーションを通じて、現地の情報収集にも当たっていました。
肝心の物件探しですが、不動産会社でオープンになっている物件は、概ね優良物件ではない印象でした。人脈を活用しながら、オープンになっていない優良物件を探していました。優良物件を見つけた場合、即返答しないと、不動産屋はすぐ他者に紹介します。このため、現地から優良物件の話があった場合、私は日本にいたとしても、少なくとも3日後には現地に渡航して、物件交渉を行いました。以上の出店準備を進めて、2017年2月に「とんかつ玉藤カパフル店」をオープンしました。

海外1号店の出店

ワイキキから少し離れた「カパフル通り」に出店しましたが、2017年度のSNSの新規飲食店投票で全米22位、ハワイ州で1位に選ばれ、州内屈指の人気店となりました。ここ数年、新型コロナウイルスの影響もありましたが、テイクアウトに注力したことで売上は落ちず、ハワイでコロナ禍に勝った唯一の飲食店と、地元では言われています。現在、予約は約半年待ちで、ハワイを代表するレストランとなりました。
なお、コロナ禍で一旦中止していましたが、ハワイで2店舗目の出店を計画していて、2023年の秋口から調査を進めています。また、ハワイで2店舗目を出店した後は、アメリカ本土への出店も検討しています。

これから海外進出を目指している方々へ

これからのビジネスのグローバルスタンダードは、欧米式になると思われます。我々はノウハウがない状態で出店しましたが、アメリカのビジネスを身をもって学ぶことができました。特に、会計システムや労務管理など、アメリカで当たり前となっていることは、今後、日本でも広まっていくかと推測されます。海外で学んだことは、日本での経営にとってもメリットとなりますので、まずは小さな事業からでもチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

1963年(昭和38年)の創業以来、北海道を中心に受託給食事業やフードコンサルティングのほか、
「とんかつ玉藤」などの外食事業を展開している。

株式会社どうきゆう
札幌市豊平区月寒東1条17丁目5-48 有田不動産ビル2F
受託給食事業、フードコンサルティング、外食事業
520名