CASE STUDY
進出事例
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INTERVIEW 01
株式会社野口染舗
5代目
野口 繁太郎
創業より現在5代目の野口繁太郎さんは、ワーキングホリデーを利用してオーストラリアのファームステイで農作業に従事した経験のほか、アメリカ横断旅行をするなど、アクティブな経歴をもっています。海外滞在時に家業や日本の文化である「着物」と向き合い、2006年に野口染舗に入社しました。
海外で気づいた「着物」との距離
20代前半にオーストラリアとアメリカで過ごしていた頃、どこへ行っても「着物」について尋ねられました。でも、私は日本人なのに着物を着ることができないし、答えられません。いつの間にか、日本人と着物の間には大きな距離があることに気づき、帰国後、改めて着物と向き合いました。まずは「日本人が着たくなる着物」という視点から着物を見つめ直し、これから自分が進むべきビジネスの方向を模索しました。
試行錯誤を経て、普段着として気軽に着ることができるデニム生地を使った『着流しデニム』を発表。2011年から本格的に『着流しデニム』の販売を進め、2012年にはサッポロコレクションでファッションショーを行いました。
2013年には『Shi bun no San』(シブンノサン)という自社ブランドを立ち上げるとともに、着物の下に着用する長襦袢をTシャツにアレンジした簡易襦袢『JUBAN Tシャツ®︎』を販売。以降、関東や関西圏の大手百貨店に出展し始めたところ、当初は日本人を対象に販売していましたが、徐々に外国人観光客からの人気が高くなり、2016年の「おもてなしセレクション」※注1では『JUBAN Tシャツ®︎』が選ばれました。これらの取り組みは、結果的に日本国内で海外のニーズやマーケティング調査につながりました。
海外進出への足掛かり
北海道を訪れる外国人観光客は、2013年に初めて100万人を超えました。その頃から、店舗で実施している染物体験に参加する外国人観光客は増加の一途を辿ります。染物体験は、伝統的な日本文化に触れることができ、老若男女問わず楽しめる体験型アクティビティとして人気が高く、当社の取り組みなどを口コミで海外に発信できる良い情報発信ツールでもありました。
また、時を同じくして、成田空港や羽田空港国際線ターミナルのショップで『JUBAN Tシャツ®』の販売を開始しました。2008年から海外向けに取り組んでいたプロジェクトが着実に実を結び、海外進出の足掛かりとなったのです。
しかし、2020年の新型コロナウイルスの感染拡大により、インバウンド消費による恩恵は消滅しました。新型コロナウイルスの感染拡大は、当社の染物体験の中止や空港での『JUBAN Tシャツ®』販売中止などといった海外向け事業はもちろん、着物の染め替えやシミ抜きを行う本業にも大きな影響を与えました。
コロナ禍で芽生えた新規海外事業
大きな影響とは、コロナ禍により外出機会が減り、着物を着る機会がなくなってしまったことです。当社としては死活問題でした。行政の窓口相談を利用したほか、新規事業としてクラウドファンディングを活用した『JUBAN Tシャツ®』の国内向け販売に挑戦しました。国内のクラウドファンディングサービスはいくつかありますが、無在庫で先行販売ができ、購入後に製造販売ができる「Makuake」を活用することにしました。
2023年、『JUBAN Tシャツ®』は、発売開始からちょうど10年が経っていました。5月に新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行し、日本国内においてもコロナ前の日常が徐々に戻り始め、さらに、円安を背景としたインバウンド熱も再び高まり始めます。
そんな2023年の夏頃に、アメリカにある世界最大規模のクラウドファンディングサービス「Kickstarter」のパートナー企業から、『JUBAN Tシャツ®』の販売依頼がきたのです。きっかけと
なったのは、コロナ禍に挑戦した「Makuake」での同商品の販売でした。話はトントン拍子に進み、12月から「Kickstarter」にて『JUBAN Tシャツ®』の販売を開始し、再び当社の海外挑戦
がスタート。販売に当たって、現地コーディネーターから『JUBAN Tシャツ®』をジャケットに合わせるという提案を受けました。今回の挑戦は、どこまで海外の方々からの反響があるかを知る、重要なプロモーションになると考えています。
これからの海外展開の見通し
2024年は、中小企業基盤整備機構主催の「中小企業総合展 i n G i f t S h o w 」の出展のほか、アイヌ文様タイプの『J U B A N Tシャツ®』を新千歳空港で販売開始するなど、「Kickstarter」の取り組みを足掛かりに、一度止まった海外展開の歩みを再び進めていきます。
当社の中期的な目標は、海外の和食レストラン等のユニフォームに、当社で製造した製品を導入すること。「食」は、文化を伝える上で非常に有効です。海外の和食レストラン等を通じて「食」とともに「衣」でも、日本の伝統文化を伝えていきたいと思っています。その観点でいくと、現在販売している『JUBANTシャツ®』は有効なコンテンツですし、海外のニーズに合った「着物」の販路拡大も十分期待できると考えています。
1948年(昭和23年)に札幌市菊水で創業、着物の染め替えやシミ抜き、
染色を行い、2023年(令和5年)に創業75周年を迎えた老舗店。
- 社名
- 株式会社野口染舗
- 所在地
- 札幌市白石区菊水8条2丁目2-9
- 事業内容
- 着物、染色、加工、製造、クリーニングに関わる業務
- 従業員数
- 12名